三里浜砂丘地農業支援センター
事務局長 山田誠一さん

福井県の特産である「らっきょう畑」などが広がる「三里浜砂丘地」にて、U・Iターン者に対し新規就農の為の手厚いサポートを行う三里浜砂丘地農業支援センター事務局長の山田誠一さん。坂井市・福井市またがり新規就農者の受入れを推進。センター設立後の僅か8
年で25人の新規就農者を招致するなど、坂井市の農業を支える一人。

やり残した「砂丘地」をこの手で。

私の現在の姿というのは、市役所を定年した際に、本来ならその後は好きなことをやって…という事を考えていたのですが、三国町役場から市役所を含めて42年、その7割を農林水産行政の仕事をさせていただいた。
しかし、最終的にこの「砂丘地」だけが手をつけられていなかったことに気づく。
砂丘地を「なんとかしたい」という思いの中で定年を迎えたが、坂井市より「センターの立ち上げに協力してほしい」というお声かけをいただき、九年目に入ろうとしています。
福井県特産品らっきょう畑上空写真|三里浜砂丘地|坂井市移住

良い所も良くない所も、誠実に伝え、フォローを続けた。

まず最初に、こんなにも沢山の方に来ていただけるとは思っていませんでした。
最初は一人、二人でもそこから初めていければいいかなと考えていました。
既存の農家さんの高齢化に伴い、若い力を入れたいと砂丘地の良いところ、悪いところを含めて宣伝をしていたら今の姿になりました。
新規就農された方の平均年齢は41.5歳です。また、県外が半分、県内が半分という割合です。

手厚いサポート体制で成し得た「離脱者0(ゼロ)」

農業経験のない人が多いので、まずは「ふくい園芸カレッジ」に2年間籍を置いてもらいます。その後、就業なのか、就農なのかを自分で決めていただきます。
就農を希望の場合は、自分の就農したい場所を選んでもらっています。
里親制度というのは、県内外問わず農家さんとの接点はないと思うので、その接点を作るために里親(農業を教えてくれる農家)の元へ行って技術を習得してもらう。里親の人数は一人の場合も、二人の場合もあるし、自分が作りたい作物農家のとこへ研修に行ってもらうのが基本です。

それと一番大事なのが、”相性が合うか”?ということ、まずはそこから始まるんです。
そこで、国のインターンシップ制度を活用し、2週間研修してもらい、里親(研修先の先輩)と相性が合うのかを確認した上で1年間里親の下で勉強してもらいます。

この制度の良いところとして、里親さんの独自のポリシーであるモノづくりの経験を土作りからはじまり最終的に収穫、後始末まで勉強していただけます。里親さんから就農の
お墨付きをもらえた時に砂丘地で就農できます。

里親さんのところに行ってもらって勉強しているおかげで今日までに志半ばで砂丘地から離れたという方はゼロです。全ての方が就農する事ができています。

ふくい園芸カレッジ|坂井市移住

作って終わりじゃない、手厚い販路開拓のフォロー

収穫した作物を道の駅や、いねす(野菜直売所)等で販売する時に保証人が必要な場合があります。保証人は地元の人でないとダメので、里親さんになってもらうのが一番ベスト。
施設での栽培で、1年ぐらいでは自分の技術やノウハウは100%にはならないので、例えば

・作ってるものの元気がなくなってきた
・色が変わってきた
・虫がついた

という場合には、すぐに里親さんに相談し、解決策をいただく。

三里浜砂丘地のダイコン|坂井市移住

三里浜砂丘地の良い所と努力すべき所。

品物自体はその場所で合ったものを作ってもらうというのが、今日までに先輩らが築き上げてきたものです。
もともとここには水設備もないので、らっきょうと、果樹が少しとぶどうや桃など
があった農地だったのですが、福井新港の売収によって半減した畑を水田を埋め立て、再整備をしていただき、そこに現在の砂丘土壌が出来上がり、それから露地栽培が始まって徐々に施設園芸に今変わりつつあるっていうところです。砂地での栽培なので、特にきめの細かいツヤのいいものが出来るので特に根菜類は付加価値がついてるようです。

良い所と言えば、砂地のため水はけが良いので、ここの砂地には基本的に縦横に巡らされてる排水路というものがありません。地下浸透っていうことで、少々の雨なら作業はでき、雨が多く降っても地下浸透の速度が速いので、作業が容易にできるって言うのがいいとこです。それから悪いとこも少しちょっと言いますと、肥料が浸透する確率が高いので、肥培管理が容易にできるんですけど肥料が通常の土壌と比較して多く使用するのは覚悟していただかないといけない。春の嵐の対策として砂が飛ぶのを防止するために防風ネットを設置したり、風よけの作物を作ったりしながら皆さん努力して作物を作っておられます。
良い所も悪い所も皆さんに理解してもらった上で砂丘地を選んでいただいているというふうに考えています。

三里浜砂丘地のダイコン|坂井市移住

県の特産品「三年子らっきょう」だけじゃない人気の作物とは。

露地の基本的な物はこの三里浜には県の特産品である「三年子らっきょう」っていうのがあるんです。出荷までに足掛け3年丸2年土の中にいるっていうことですね。
定植してからその翌々年の2年後に掘り上げる加工用のらっきょうです。これは県の特産品になってますが、そのらっきょうが露地栽培されています。ほかに露地で栽培されているものといえばダイコンやスイカ、カンショが主流です。その他に新規品物としてニンジンも人気が出てきています。それからあと施設の方で言うと国や県の事業を入れて頂いたりして耐候性のハウスを建設し、その中で作物を作っています。

また、その場で加工したりその箱詰めしたりという作業ができない場合には格納庫も作ります。後は浅井戸を掘り、灌水設備を作ります。新規就農者が栽培している主流の野菜はミディトマトが多いですね。砂の性質から扱いが容易なので、ハウスでは一年三作が可能です。

また、砂地なので水捌けが良く、畝立ての必要がないという利点もあります。ミディトマトや、スイカ、ダイコン、ニンジンなどもハウスに入りますし、他にもアールスメロンや、マルセイユメロン、変わり種として、生で食べる白いトウモロコシや、ブロッコリーなども栽培しておられるようです。

遊休農地を活用した取り組み

現在、坂井市三里浜には約220haの農地(畑)があります。
その中の3%ぐらいが荒地と呼ばれるもので作物を作る事はできませんが、残りの土地は今すぐでも作付けができる状態になっています。
当然新規で入って来られる方、それから規模拡大しようとする農家さんであっても、農用地利用集積計画に基づき契約を結びながら借りてもらいます。今までに坂井市だけでいいますと約30ヘクタールくらいを貸したい農家さんに届け出をしてもらいお貸ししてるというのが現状です。

空き家を活用した取り組み

坂井市には定住促進として空き家の活用事業があります。県外出身者の方については3年間の空き家の助成があるのでその助成を活用しています。
先輩農家からお聞きして「あそこの家空いてるよ」という情報を得て紹介しています。
契約後3年間は助成金があり、その後は家主と交渉をし継続に至っています。

様々な栄えある賞をいただきました。

砂丘地には無かった「ニンジン」を定着させたさせたという事で協議会として感謝状をいただきました。その後には北陸農政局管内での農山漁村って書くんですけど「農山漁村(むら)の宝」という個人の称号をいただきました。
また、今年度は福井県より農林漁業賞をいただきました。
山田誠一さん感謝状|坂井市移住

私自身も”里親”の一人として

人と人との接し方の中での日常の小さな事についてはあまり耳に入ってきませんが、一番怖いのは里親さんとうまくいかないというのが一番のネックになるのかなと思います。
現在26件目なのですが、その中に1度か2度ほどあったような記憶はあります。それはお互いの「ボタンの掛け違い」なのか、「性格が合わないのか」と探った上で最終的には両方の意見を別々の場所で聞いて、それの仲介をしたという事もあります。
ちょっと変わったエピソードで言うと、「今腹が痛いんだけどとか薬局の場所がわからない」と言う事がありました。その子は、大阪から来られたんですけど来てしばらく経って住む里親さんにも言えないし…というので、迎えに行き薬局に連れて行ったというエピソードもあります。

プロフェッショナルによる万全のサポート体制

就農する際に就農計画を立てるのですが、「チーム会」という組織がありまして、坂井市・
福井市を基盤とする県、農協の担当レベルの人にお越しいただき週に一度開催しています。坂井市側では今日までに300回を超えています。

就農計画では5年後に250万円収入を上げられるよう計画を立てて、年に2回、伸び率と共にもう少し頑張らないといけないとか、もうちょっとこんな事したらいいんじゃないかっていう指導をしながら5年間見ていきます。最初の3年間は、月1回里親さんも含めて巡回をし、かかえている問題がないか等を聞いたり、その聞いたのを整理してチーム会の中でいろいろ問題提起した上で、育てていくというやり方をしています。

ふくい園芸カレッジ|坂井市移住

これから坂井市で農業しようと考えている方にメッセージをいただけますか?

当協議会のホームページをご覧いただくのが早いと思うのですが、週1回〜2回ほど、私のつぶやきも更新していますし、砂丘地の情報もありますので是非ご覧ください。
「さんりはま」で検索することが出来ます。
平日8時半〜17時15分までに0776-43-0839にお電話いただければ、実際に砂丘地農業をご覧いただく事も可能です。
最終的に判断するのは私ではなく、現地を見られた方が「砂丘地に行って勉強してみようかな」って思った時に選んでいただければと思います。
今日までに25人の方が砂丘地で就農していますが、研修中であったり、ふくい園芸カレッジで勉強中の方も含め、4名の方が砂丘地を希望しています。

三里浜砂丘地農業支援センターホームページ

ふくい園芸カレッジ詳細ページ